宗谷本線 秘境駅・糠南駅

虫のための駅

大草原のなか、ぽつんと取り残された物置と朝礼台。1日の汽車は3本。周りは見渡す限りの牧草地・雪原。なぜこんなところに駅があるのか、そして本当に駅なのか。そう思うはずです。何をしに行くんだ、そう思われるかもしれません。しかし、人里離れたところでぼーっとしてみるのは、実はとても贅沢なことなのです。たまには都会の喧騒を忘れて、しばし佇みに来てはいかがですか。

JR宗谷本線

北限へ続く一本道

日本最北端の地、稚内へと通ずる宗谷本線。糠南駅は宗谷本線の北寄り、宗谷半島北部に位置しています。ひたすら続く平原、雄大な天塩川、海の向こうには雪化粧をした利尻富士。その先にある最北の地に心躍らせ、雪がしんしんと降るなか、1両のディーゼルカーで北へ。雄大な車窓の一角に、忘れられたかのようにその駅はあります……。

ホーム

簀の子の朝礼台

優雅に曲がる線路と、そこに寄り添う1両もないホーム。糠南駅のホームは木の板張りです。ファンの間で「板駅」と呼ばれるこの構造も、糠南駅が秘境駅たる所以です。

待合室

ヨド物置でお待ちください

ホームから伸びる板の先には、ヨドの物置が。糠南駅の待合室は物置を改造したもので、今も地元の方やヨドコウさまのご厚意によって維持されています。その物置――いや、待合室のなかには、時刻表や簡易的な「椅子」(逆さに置いたビールケース)、100円ショップで売られているライト、駅ノートなどが所狭しと配されています。1人入れば満員です。

列車本数

19時44分発最終列車

糠南駅の列車本数は1日に上下3本ずつ。早朝に1本、昼に1本、夜に1本です。1日の利用者は1人未満。誰か1人でも糠南駅から列車に乗れば、その日は繁盛したことになります。

ファンたちの愛着

それでも、愛される

周りには何もなく、利用者もほとんどいない。もう誰も見向きもしなくなったようです。
しかし、駅の想い出ノートには連日ファンたちの熱い想いがつづられています。地元の方が、待合室の管理や除雪にやってきます。時にはファンたちが集まってイベントを開くこともあります。そのほかにも、列車と徒歩のみで秘境駅を巡る企画や、たくさんの不定期イベントが行われます。
誰もいないように見えて、愛されているのです。

秘境駅キャラクター

ぬかにゃん

幌延町では平成28年、秘境駅事業の一環として「秘境駅キャラクターコンテスト」を開催し、一般から秘境駅キャラクターのアイデアを募りました。審査の結果、糠南駅のキャラクター「ぬかにゃん」が誕生しました。ヌカナンの山奥から出てきた雌猫で、ヨド物置に住み着いてファンをひそかに見守っています。週に2~3日程度、幌延町の秘境駅課で勤務するために、人に変身して幌延駅まで宗谷本線で通勤しているのです。
「秘境駅キャラクターコンテスト」が開催されました! - 幌延町
「秘境駅キャラクター」経緯等について(PDF) - 幌延町

ぬかにゃんぬかにゃんぬかにゃん

糠南駅の現実

JR単独では維持困難

日本は資本主義の国です。何をするにもお金が必要です。しかし、国鉄時代と異なり、黒字路線がひとつも存在しない(2016年度)道内のみで経営するJR北海道。分割民営化の際に救済策として積み立てられた基金も、近年の低金利のなか運用益が低下。事故や不正も相次ぎ、安全への投資に今まで以上に力を入れることになりました。その結果、従来の合理化策では会社として維持できなくなってきたのです。そんな中、人の少ない地域を延々と走る路線に廃止が迫っているのは言うまでもありません。
糠南駅や宗谷本線も例外ではありません。利用のほとんどない駅に列車を止めても、軽油と圧縮空気の無駄遣いにしかなりません。2016年8月、糠南駅が位置する天塩郡幌延町に、駅を廃止する意向が伝えられました。
当社単独では維持することが困難な線区について - JR北海道

幌延町の今

駅を守るのはJRではない

かねてより町内の秘境駅を観光資源として活用してきた幌延町は、「糠南駅を含む幌延町の秘境駅群は町おこしの主軸だ」として、町民の意見を聞いたうえで税金を投入し、平成29年度の1年間駅を維持することを決定しました。そのうえで、町内でさまざまな鉄道イベントを開催しています。
しかし、雪国の駅を維持する費用は決して安くはありません。幌延町は比較的財政に余裕がありますし、積極的に人を呼び寄せて成果を上げてはいますが、長年にわたって駅を維持できる保証はないのです。
JR北海道の事業範囲見直しに対する町の方針について(PDF) - 幌延町

支援のご案内

あなたも駅を残しませんか

こういった駅の維持費は基本的に幌延町が負担しています。しかし公費を使っている以上、幌延町にとって何らかの効果が現われなければ中止となる可能性もあります。秘境駅を訪れるときは列車利用を心がけることや、JR北海道と地元とにお金を落とすことが旅人に求められています。また、幌延町では「あなたが守る秘境駅プロジェクト・マイステーション運動」を展開していて、「ふるさと納税」という金銭的な支援と、駅の補修といった人的な支援とへの門戸を開いています。直接訪れることが難しい場合は、このような制度を活用して幌延町を支援することもできます。さらには、SNS等で秘境駅や地域の魅力を発信することも、立派な支援のひとつです。さああなたもご一緒に、秘境駅を応援してみませんか。
ふるさと納税 - 幌延町